- FX@外為比較ランキング
- 外国為替・FXニュース
- アメリカが検討した香港ドルペッグ制度の弱体化とは?
アメリカが検討した香港ドルペッグ制度の弱体化とは?

中国が先日「香港国家安全維持法」を施行したことを受けて経済に動揺が走っています。そんな中、アメリカが中国に対し経済制裁として「香港ドルペッグ制を攻撃」を検討しているという報道がありました。具体的には、香港の銀行による米ドルの購入を制限する案でしたが、後にさまざまな懸念から同案は取り下げられたとされています。
そこでこのニュースを理解するために、香港ドルペッグ制度に関する基礎知識、そしてこの制度のメリットやデメリットなどを説明していきます。
中国とアメリカの経済を巡る争い
まず前提として、アメリカと中国は世界経済の覇権争いをしており、周囲になるべく迷惑をかけないように喧嘩している状態です。ニュースの言葉を分解すると「香港ドルと米ドルとのペッグ制を攻撃する」ということです。ドルペッグ制とは基軸通貨である米ドルとペッグ(固定)させるということです。現在香港ドルは一定幅を保った上で米ドルと固定されています。
日本も過去にドルペッグ制を採用していたことがありますが現在は変動相場制を導入しています。日本円がドルペッグ制を採用していた時期と価格は下記のようになっています。
- 1949年~1971年:1ドル360円固定
- 1971年~1973年:1ドル308円固定
香港では1983年以来このドルペッグ制度を採用していて、当初は「1ドル=7.8香港ドル」でしたが、2005年以降は「1ドル=7.75~7.85香港ドル」と設定されています。この値幅を超えないよう国が介入しています。香港の場合は中央銀行にあたる香港金融管理局(HKMA:Hong Kong Monetary Authority)が為替操作を行います。最近の例だと、このHKMAが4月21日に15億5000万香港ドル(約215億円)相当を売却していました。というのもこの時、上限である1ドル=7.75香港ドルに達していたからです。
HKMAが香港ドルを売却した意図を分かりやすくするために日本円に置き換えて説明します。1ドル108円の状態を109円にしたければ、円安の動きになるので円を供給(売る)します。逆に108円を107円の円高にしたければ円を回収(買う)するという流れです。
ドルペッグによるメリットとデメリット
今回の「香港ドルペッグ制を攻撃」というニュースは、要するに香港の為替操作をアメリカが邪魔をするという構造です。今回は、香港の銀行による米ドルの購入を制限するという案だったようです。しかしブルームバーグの報道によると、この案は支持が集まらなかったといいます。その背景として、今回の「香港ドルペッグ制の弱体化」という案はアメリカには諸刃の剣のようで、世界の基軸通貨である「米ドル」の立場にも打撃があると考えられています。
そもそもドルペッグによる効果にはどのようなものがあるのでしょうか。主に発展途上国がドルペッグを採用していて、不安定な自国の通貨を安定させる狙いがあります。また自分の国の通貨がドルと連動することによって、アメリカとの貿易による採算を安定させる効果もあります。そうすることで、経済的な不安定さを軽減し発展途上国にとって重要な海外からの投資を受けやすい状態にすることも期待できるとされています。
その代わりのデメリットとしては、ドルペッグだとどうしてもアメリカの金利政策に左右されるため、自分の国で行う通貨政策の影響が小さくなってしまうという点があげられます。
香港をめぐる中国とアメリカの対立が深まるなか、トランプ大統領は7月14日、香港に対する優遇措置を廃止する大統領令に署名しました。記者会見では「香港は今後、中国大陸と同様に扱われる」とも発言しています。ここ数カ月間のアメリカと中国の関係の緊張は高まっており、今後とも両国の動きに注目です。