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香港国家安全維持法とは?5分で分かる香港デモの背景と新法の影響

中国による「香港国家安全維持法」が6月30日施行されました。今回の法律は、今後の香港の情勢を大きく左右するものであるとされています。そこで今回は、これまでの香港と中国の歴史をおさらいし、「香港国家安全維持法」の影響、そしてアメリカと中国の対応についてまとます。
「一国二制度」とは?香港のデモと歴史を振り返る
まず「香港国家安全維持法」を簡単に説明すると、反政府の行動取り締まり、国家分裂、テロ活動、政権転覆、諸外国と結託などを犯罪行為として最大で終身刑になるというものです。すでにこの法律に違反したとして10人が逮捕されたとの報道もあります。
今回制定された法律に関して、香港に認められていた高度な自治、言論やデモの自由などを保障した「一国二制度」がおびやかされるとしてと批判の声が上がっています。
ここで背景を理解するために少し歴史を振り返ります。香港は1997年に英国から中国へ返還されました。その際に50年間は資本主義を採用し、社会主義である中国とは異なる事が約束されていました。そして「一国二制度」と「香港特別行政区基本法」という仕組みが取り入れられることになりした。この制度によって香港では、言論や報道、出版、集会やデモの自由などが保障されてきました。
そんな高度な自治が認められているはずの香港ですが、中国政府の介入ともいえる動きに対して大規模なデモが行われるようになります。「2014年の雨傘運動」では、普通選挙が導入される予定だったにも関わらず、中国政府が都合の良いようにルールを変更したことにより、「真の普通選挙」を求めて学生を中心に大規模なデモへと発展していきました。
その次に記憶に新しい2019年の100万人デモでは、「逃亡犯条例」改正に関して反対を表明するデモのことです。この条例は、これまで香港と犯罪人引渡し条約を結んでいなかった中国をはじめとする国との間で容疑者引き渡しを簡潔にするものです。
なぜこの条例に対して大規模なデモに発展したかというと、改正後の条例によって実質的に香港市民は中国当局の取り締まりの対象になる可能性があり、「一国二制度」の危機だとして反対の声が上がりました。結果、香港政府は2019年10月23日、逃亡犯条例改正案を正式に撤回したことを発表しました。
しかしデモ参加者らの目標は、普通選挙の実現などを「五大要求」に発展しており、デモ活動は2020年も継続されています。
「香港国家安全維持法」の影響とさまざまな国の対応
「香港国家安全維持法」に関して考えられる影響としては、中国が香港への支配力を強めることです。香港では、「香港が欧米に支援を求めること」や「独立的存在という主張」「政党批判(共産党)」は違法となります。これまで香港市民が意思表示の手段として用いてきたデモなどには大きな制限がかかる可能性があります。
また外国人も処罰対象になるため、アジアの金融センターとしての側面を持つ香港から外国人ビジネスマン、海外マネーが逃避することが懸念されています。
今回の中国の動きに対して黙っていないのがアメリカです。香港の自治が侵害される「香港国家安全法」が制定される前の6月26日、アメリカ政府は中国共産党の当局者に対するビザの発給を制限することを発表、続く29日には香港への防衛機器の輸出の停止することを明らかにしています。これらアメリカの措置に対して中国政府も、国家安全法に干渉するアメリカ市民に対してビザの発給を制限すると対抗しています。ただし現在の新型コロナウイルスの世界的流行による入国制限の現状をふまえると、両国のビザの制限という措置は現実的な影響よりも、象徴的な意味合いが強いと考えられています。
その他の国も「香港国家安全維持法」に対応する動きをみせています。イギリスは7月1日、香港市民300万人を対象にイギリスでの永住権や市民権の取得申請を可能にする方針を明らかにしました。台湾では同法律が施行されて数時間後、香港の在住者や企業の移住と移転に関する専用の窓口を開設し、金融業界を中心に香港の優秀な人材を誘致する動きに出ています。
「香港国家安全維持法」が施行されてから数日ですが、すでに香港国内では逮捕者をはじめ大きな影響が出ています。そして世界のさまざまな国への影響はこれから先さらに大きなものとなっていくと予想されます。今後、アメリカと中国をはじめとする各国の動向にも要注目です。